User Manual
ヤマハパワーアンプ ホワイトペーパー
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2. ヤマハパワーアンプの技術
2.1. デュアル・モノラルアンプ構造
ヤマハパワーアンプのハードウェア設計
TXn、Tn シリーズ、PC9501N パワーアンプはデュ
アル・モノラルアンプ構造となっており、シャー
シ内部に全く同じ二つのモノラルアンプユニット
と電源部を左右に配置することで一つのステレオ
アンプとして駆動しています。この構造によりチ
ャンネル間のセパレーションが向上します。さら
に両チャンネルへ独立して電源が供給されること
により、片チャンネルに重い負荷がかかっても別
のチャンネルの電源には全く影響が及びません。
これは片チャンネルに大電力を要するサブウーフ
ァーが接続されている場合などでの安定動作に大
きく貢献します。プロオーディオの市場では上級
機種でもこのようなデュアル・モノラル構造を持
つパワーアンプは希少です。また、独立した 2 つ
の電源は逆位相で作動することで、お互いが電源
電圧のノイズをキャンセルし、電波の干渉を防ぐ
だけでなく音質の向上にも寄与しています。
[
図
10]
デュアル・モノラルアンプ構造。
両チャンネルが独立した電源供給を持つ
2.2. 振動抑制
アンプ自身の振動は音質にも影響を及ぼすため、
様々な方法で内部部品や筐体の振動を抑制してい
ます。例えばパワートランジスタは大電力を出力
する時にそれ自体が振動を起こしますが、これを
抑制するためヒートシンクとの結合部には薄膜を
挟んで共振を抑え、ヒートシンクも肉厚としシャ
ーシに頑丈に固定されています。これら多くの工
夫が音質の向上に貢献しています。
2.3. フル共振型電源
電源部のノイズの抑制もパワーアンプの音質に貢
献します。TXn, Tn, PC1N シリーズに採用されて
いるフル共振形電源は、電圧共振と電流共振を併
用したスイッチング電源で、ナチュラルな電圧と
電流の波形を生成します。一般的なスイッチング
電源で行われる「ハードスイッチング」は矩形波
に近い直流を出力してしまうため、フィルターを
必要とします。それに対して、フル共振型電源の
「ソフトスイッチング」の波形は高周波ノイズを
劇的に軽減できるため、オーディオ再生に最適な
電源なのです。
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図
11]
他社アンプ電源部の電流と電圧波形。
多くのノイズが見られる。(赤丸)黄色が電圧、青が電流。
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図
12]
ヤマハフル共振型電源。波形はスムースで、スイッチングノイズは
非常に少ない。黄色が電圧、青が電流。