User Manual
楽器としての性能を上げることはもちろんです
が、MOTIF ESのコンセプトである、“フレーズ・
ファクトリー”の考え方をさらに進めて、より直感的、
感覚的に曲のイメージを形にできるように進化させ
ました。例えば、パフォーマンス・モードでは、気に
入った音色やアルペジオを最大4パート重ねて演
奏することができ、その演奏をそのままシーケンサー
に録音することが可能です。“音を出してたら曲の
土台ができた”というようにユーザーをインスパイア
するシンセサイザーに仕上げました。(堤)
操作性の向上、情報一覧性をアップするのが
目的でした。音作りや、パターン制作時など、そのと
きに一度に知りたいパラメーターの値を視認できる
ことで、音楽の方により意識を使えるようにしたかっ
たのです。また、リスト表示可能にすることで、エフェ
クトやフィルターの種類を変更するときに目的のもの
を迷いなく選ぶことができるなど、ユーザー目線をポ
イントにしています。(堤)
CPUやDSPといったハードウェア部分とOSと
いったシステムの根 幹の見 直しを行いました。
AWM2という音源方式そのものは同じですが、4
パート同時に使用できるアルペジエーターやVCM
エフェクトの搭載を実現しました。またボイスの強化
も単なる技術の進化に陥らず、8エレメントを全部使
い切ろうとして発音の重い音にならないように気を
付けました。あくまで楽器としての表現力を上げるた
めに、という思考ですべてが考えられています。(堤)
ギター、管楽器、弦楽器の音色群の表現力が
アップしました。通常の鍵盤演奏の奏法ではコント
ロールできない、元の楽器の持っている特性を表
現できるようになりましたね。AF(アサイナブル・ファ
ンクション)ボタンを使ったXAコントロールには特
に注力しています。(大高)
MOTIF ES までのアルペジエーターは、1パー
トのみの再生に限られていたものの、音楽制作上
の有力なツールとして活用されてきました。MOT
IF XSでは、そのアルペジエーターを使った音楽
制作手法を発展させ、よりバリエーション豊かに曲
のイメージを膨らませたり、スピーディーにベーシッ
ク・トラックを作り上げることができるよう、複数パート
のアルペジエーターの同時再生を可能とするなど
の機能強化をしました。(伊藤)
世界中のレコーディング現場でスタンダードに
なっているヤマハのデジタル・ミキサーに2004年か
ら搭載された“VCMエフェクト”の評価が非常に
高く、“これをシンセサイザーに搭載できないか?”と
いう問い合わせが数多くありました。これを実現す
るためにもCPUパワーの増強やOSの一新を図りま
した。(堤)
プラグイン・ボードはANやVL、DXといったシン
セサイザーのエンジンそのものが追加できることが
特長ですが、波形の大容量化や、XA機能による
表現力強化を優先させました。また拡張音源は
夢を広げる一方で、操作や設定の煩雑さが音楽
を表現する意欲を削いでしまう面もありました。そこ
でMOTIF XSではシンセ本体1台で、楽器として
のあるべき形を追求したのです。また、DAWの普
及に伴って、大容量のハードディスクを搭載した
PCを巨大なデータ・ストレージとして使うことができ
るようにETHERNETを搭載しました。ユーザー
同士でのMOTIFの音色データのやり取りや、
サード・パーティーによる音色ライブラリーはPCを
使ってダウンロードするので、そのデータをいちいち
USBメモリーなどにコピーせずに、直接読み込め
た方が自然だと考えました。(堤)
音を出しっぱなしにして、音作りやフレーズ、パ
ターン作りができるようにしました。MOTIFと戯れる
ことで音、音楽が変化変貌していくことを体感でき
るようにしたかったのです。(堤)
基本は歴代MOTIFと同じ、ハイエンド・ワーク
ステーション・シンセサイザーとして、音、デザイン、
機能の新規性を提供することです。ポイントは3つ
あって、1つ目はサウンドです。新規サンプリングを
含め内蔵波形を倍増させました。S6グランド・ピア
ノ、クラビネットなどのキーボード・サウンドほか、ドラ
ム・キット、ベース、ギター、ブラス、ストリングスなどの
R&Bサウンドを強化し、さらに、骨太のシンセ・サウ
ンドも追加しました。そして2つ目は波形拡張メモ
リーとして、業界初の最大2GB拡張可能な大容
量フラッシュメモリー・エクスパンション・モジュール
を採用したこと。ライブラリーやオリジナル・サンプル
を、電源を切っても保持してくれます。そして3つ目は
インターフェースです。精悍なブラック・ボディに、視
野角が先代に比べ広がり、見やすくなった新規
ディスプレイを採用しました。タップ・テンポはじめ新
しくパラメーターのツマミを追加、使い勝手を向上
させました(大野)
MOTIFのユーザーは、非常に年齢の幅が広
く、また皆さん長く愛用していただいてますので、デザ
イン・チームにはそんなユーザーのための道具となる
ようなデザインをお願いしました。車で例えるなら、エ
ンジン性能と足回りの良さを誇り、マルチユースに耐
えうるSUV系ですね。また多くのプロ・ミュージシャン
に使っていただいていることから、議論を重ね、デザ
イン・コンセプトを“プロフェッショナル・ツール”とし、そ
れに相応しいブラックを選択しました。コンセプトに沿
うよう、グラフィックも極力シンプルにデザインされてい
ます。(大野)
音源システム自体はMOTIF XSのものを引き継
いでいますが、音の出口のアナログ回路をさらにブ
ラッシュアップすることで、音のスピード感、音圧が増
し、より正確な音像が得られるようになっています。また、
音色的には、キーボーディストにとって最も重要な手
弾き系音色を強化しました。また、それ以外の音色に
ついてもバリエーションの充実を図りました。(大野)
強いて1つだけ挙げるとすれば、クラビ音色です。
バンド・アンサンブルで使いやすいサウンドに仕上げ
ました。本物のクラビは押鍵のたびに音質や挙動
が異なるという不安定な要素があり、そのような部分
もリアルに再現しています。ほかにも、細かくサンプリ
ングされたキーオフ音やモジュレーション・ホイール
に仕込まれたミュートレバー効果など、とにかくリアル
さにこだわりました。(村田)
音の最終段、出力部のアナログ回路を改良した
点です。ハード担当者の努力の結晶です。(大野)
MOTIF XF
MOTIF XS
デザイン・コンセプトは“プロフェッショナル・ツール”
ユーザーをインスパイアするシンセサイザーに仕上げました
担当プロデューサー
大野 拓 /
コンテンツ担当
村田潤一郎
担当プロデューサー
堤 聡 /
コンテンツ担当
伊藤義久・大高史嗣
MOTIF Maker Interview
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