User Manual
スピーカーの指向角度は、間違って理解されていることが多い仕様
のひとつで す。スピーカー の 指 向 特 性 の 測 定 方 法を 図1に 示しま す。
スピーカーに一定の電気入力を加え、360°の円周上の音圧レベル
を 測 定しま す。
スピーカーシステムの設計では、受音面での音圧レベルの均一化が重要となりま
す。CD(定指向性)ホーンを搭載したポイントソーススピーカーの垂直軸を、最後列
の観客の頭上に向けることで均一な音圧レベル分布を得やすくなります。これは、
指向角度の定義と関係があり、軸を最後列に向けることで、距離減衰(逆二乗の法
則)による音圧レベルの減衰とホーンの軸外指向特性による音圧レベルの損失が
相 殺 さ れま す。
シーリングスピーカーの配置パターンとしては、5つの基本的な考え方があります。間隔を広くすればそれだけ音圧にムラが生じます。
スピーカーの公称指向角度は、「軸上の音圧
レベルより6dBSPL音圧が小さくなった時の
開き角」と定義されています。例えば図2に
おいて、6dBSPL落ちの角度が30°の場合、指
向角度は30°×2=60°になります。ここでの
ポイントは、6dBSPL音圧レベルが小さくな
る 点 が 、軸 上 と 等 距 離 の 点 で あ る こ と で す 。
スピーカーの指向角度に関して誤解が多いのは、図3におけるX点
での音圧レベルです。スピーカーと平行な直線と指向角の延長線が
交わるX点の音圧レベルは、軸上に対し
て- 6
dBSPL
にはならず、指向角度が広い
ほ ど 音 圧 レ ベ ル は 下 が り ま す 。指 向 角
が90°の場合はX点の音圧レベルは軸上
に 比 べ て- 9
dBSPL
、 指 向 角 度 が 1 2 0 °の
場合は-12
dBSPL
となります。
指向角度の広いスピーカーを使用する場合には十分な配慮が必要となります。特にシーリ
ングスピーカーの配置を検討する際には注意が必要です。
図4に公称指向角度120°のスピーカーのカバーイメージを示します。受音面における公称
指向角度の端では、スピーカー直下(軸上)に比べて12dBSPL音圧が低くなっています。ス
ピーカーのカバーエリアを検討する際には、受音面で6dBSPL落ちとなる範囲を基準に考え
ていきます。受音面で6dBSPL落ちとなる角度は、モデルや周波数により異なりますが、お
およそ公称指向角度の0.7~0.8程度と考えておきましょう。スピーカーカリキュレーション
ソフトウェア「CISSCA」では受音面で6dBSPL落ちとなる範囲をカバーエリアとして定義し
ています。
1 2 3
音圧レベルはほぼ均一
軸
受音点 2より軸 外なので 音圧レ
ベルは小さく、受音点2より距離
が短いので距離減衰は小さい。
この2つの影響により、受音点2
に近い音圧レベルが得られる。
ひいては軸上3に近い音圧レベ
ルが得られる。
軸外なので軸上の受音点3より音圧レベルは小さく、軸
上の受音点3より距離が短いので距離減衰は小さい。
つまり、軸外における損失は距離が近いことにより相殺
され、軸上の受音点3に近い音圧レベルが得られる。
30°
60°=指向角度
60度の場合
-6dB-6dB
0dB
X点 α=90°
の時、軸上に対して-9dB
α=120°の 時 、軸 上 に 対 し て- 1 2 d B
α
-6dB-6dB
0dB
-6dB
-12dB
-6dB
天井
-6dB
-12dB
-12dB
-6dB
受音面で-6dBSPLとなる角度≒公称指向角度×0.7~0.8程度
※モデル、周波数により異なります。
-6dB
天井
0dB-6dB0dB-6dB-6dB 0dB
x1.4
x1.4
x2
x2
6dBSPL落ちのカバーエリア
すき間
2 x Edge to Edge Edge to Edge 1.4 x Edge to Edge Minimum Overlap Maximum Overlap
大 小
音圧のムラ
小 大
音圧の上昇
スピーチ拡声BGM
■2 x Edge to Edge
Edge to Edgeの2倍のスピーカ
ー 間 距 離をとって 配 置 する方
法で す。
■1.4 x Edge to Edge
Edge to Edgeの1.4倍のスピー
カー 間 距 離 をとって 配置 する方
法で す。
■Edge to Edge
6dBSPL落ちカバーエリア同士
を 合わ せる方 法で す。
■Minimum Overlap
Edge to Edgeのスピーカー配
置では、カバーエリアにすき間
ができてしまいます。Minimum
O v e r l a p は 、こ の す き 間 を な く す
ことを目的とした スピーカー配
置 方 法で す。
■Maximum Overlap
一方のスピーカーの6dBSPL落
ち ポ イ ン ト と 、一 方 の ス ピ ー カ
ーの軸を合わせる方法です。
スピーカーの公称指向角度
スピーカーの公称指向角度の定義とは?
スピー カ ー の 軸 は ど こに 向 ける?
シーリングスピーカーの配置パターン
測定マイクは
この円周にそって動かす
360°
90°
270°
0°
(軸上)
図 1:
指向特性の測定方法
図 2:指向角度の定義
図 3:スピーカーから
一定距離離れた受音点での音圧レベル
図 4:シーリングスピーカーの公称指向角度によるカバーエリア
図 5:受音面で 6dB 落ちとなるカバーエリア
図 7:スピーカーの 軸 の 向き
図 6 :スピー カ ー の 配 置 パタ ーン